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三菱UFJキャピタル株式会社
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“Real Voices”“リアル ボイス”

株式会社リボルナバイオサイエンス
代表取締役CEO/COO 富士 晃嗣 氏

遺伝性希少疾患に苦しむ患者とその家族が「生まれ変わる」薬剤を一日でも早く届けたい

株式会社リボルナバイオサイエンス(以下、リボルナ)は、武田薬品工業株式会社からのカーブアウト創薬ベンチャー。社名のリボルナ(=Reborna)は「生まれ変わる」を意味するRebornと、生命の基本的な構成要素であるリボ核酸(RNA)の組み合わせに由来します。
独自の創薬プラットフォームを基盤技術とし、これまで困難とされていた低分子化合物でRNAに直接作用する医薬品の創生を通じて社会貢献を目指す代表取締役 CEO/COOの富士 晃嗣氏に、創業に至る経緯や三菱UFJキャピタル(以下、MUCAP)との会社設立時からのかかわりについてお聞きしました。

Our Science

~ 創薬技術

当社独自のスクリーニング系の基盤技術により、これまで核酸医薬品のみが標的にできると考えられていたRNAに、高い親和性を示す低分子医薬品を創出することが可能となります。この独自の技術を用いて、RNA機能修飾により根本治療効果を示す医薬品の研究開発プログラムを推進します。

創業に至る経緯

~ 自分の研究がビジネスになり、それが社会貢献につながるのを感じたい

私は2005年に武田薬品工業株式会社に入社し、おもに創薬化学の分野で、循環器、中枢神経、炎症など、さまざまな疾患領域の研究を重ねてきました。
2013年、タケダサンディエゴ(米国)に出向する機会を得て、そこで米国のバイオベンチャーのエコシステムを目の当たりにしました。研究者と投資家がチームになって事業を進め新しい技術や医薬品を創出していく、そのダイナミックな動きをまさに現場でリアルタイムで体感したわけです。私にとって成し遂げたいことは、自分の研究がビジネスになり、それが社会貢献につながる、という感覚をチーム一丸となって得ることだ、との気付きを得ることとなりました。
そのような思いを抱いていたところ、武田で2016年にカーブアウトを支援するプログラムが公募されました。武田の中で経験を積んでいくか、それとも安定を捨てて自分の夢に向かってチャレンジするか、深く悩んだのもこの頃です。そのとき、仕事を通じて知り合った信頼する方から、MUCAPの担当者に会ってみませんか?というお話をいただきました。

三菱UFJキャピタルとの出会い

~ 日本の創薬のエコシステムをともに作っていく仲間

挨拶もそこそこに、様々な角度からの質問を投げかけられました。会社を作りたいというのはどんな思いからなのか、あなたが成し遂げたいのはどんなことか――それまで深く考えたことがなかったことまでをMUCAPの担当者の島﨑さんが引き出してくれました。そして、その出会いが私がベンチャー創業に向けて大きく舵を切るきっかけとなったのです。私の話をじっくりと聞いた島﨑さんは、「必ず、サポートさせてもらいます。一緒にがんばりましょう」と力強く言いました。その言葉が、自分の大きな自信になりましたし、自分のなかで漠然と温めて来た計画が、初めて外部の人から評価していただいた、という感覚になったのです。
そのときの島﨑さんの言葉は今でもよく覚えています。彼は、「全力でサポートするから必ず成功してください。そしてその成果を後に続く人に渡して、あなたはまた新しいことにチャレンジしてもらいたい。その時にはまたMUCAPから支援させてもらいます」といったのです。全く新しい概念のベンチャーを成功させ次の世代に渡す、そして自分はまた新たな事業を創り出していくことで、日本の創薬エコシステムに貢献して欲しいということです。これには大きな勇気をいただきました。
島﨑さんは、自身も日本と海外の両方で創薬の研究者を長く続けてこられた方です。日本の良さを知っているからこそ、欧米に大きく水をあけられている創薬を何とか変えたいという思いを抱き、帰国してベンチャーキャピタリストに転身されたという経歴をお持ちの方でした。それだけに、私の思いを深く理解していただけたのだと思います。VCにそのような人材がいること自体が、私にとって驚きでしたし、MUCAPの懐の深さを表しているようにも思います。

三菱UFJキャピタルとともに事業を進める

~ その先の「リボルナ」に必要なことを考え続ける

武田時代の研究チーム7名が創業メンバーとなり起業することを決めてから、MUCAPとは毎日のようにコンタクトを取り、準備を進めてきました。武田薬品工業としてもカーブアウトベンチャーの支援は初めての試みでしたし、私も起業に関しては素人です。関係者が多い中で、順調に進んだことはひとつもなかった、と言ってもいいほどです。設立直前のタイミングで思いもかけないことが起き、心が折れそうになったこともあります。その時にも、島﨑さんが、当初計画通りに出資できるようにMUCAP社内にしっかりと説明するだけでなく、私自身の精神的な部分も含めてサポートし続けてくれました。感謝しかありません。
投資後については、VCによっていろいろな支援のやり方があると思いますが、MUCAPはチームで支援してくださっています。島﨑さん、関谷さんというそれぞれの得意分野を持つ担当者が知恵をしぼり、リボルナというチームの一員として考え、動いてくれているように思います。私も外部の投資家、とは思っていません。むしろ、同志、戦友という感覚でいます。今も、会社の全体方針に関わることから、人材採用に至るまで、それぞれの視点から情報、意見を持ち寄り、相談しながら二人三脚で事業を進めています。また、MUCAPからは、事業開発の相手先となるグローバル製薬の紹介や、MUFGグループの紹介など、その先を見据えて、リボルナの成長に必要となる機能を紹介してもらっています。

今後の展望

~ 遺伝性疾患に苦しむ患者さんとその家族が喜ぶ顔を見るためにスピード感をもって事業を進める

現在、リボルナが取り組んでいる主なプロジェクトの一つは、脊髄性筋萎縮症治療薬候補の研究開発です。RNAから作られるタンパク質の異常が要因となる脊髄性筋萎縮症では、従来は酵素や受容体などのタンパク質をターゲットとして治療するのが常識だったところ、私たちはRNAを直接標的としています。これまでは高分子医薬品でしか狙えなかったRNAを、低分子医薬品でも標的にできるということを技術的に証明しているのが私たちの技術の強みです。高分子医薬品は病院に行って注射でしか投与できませんが、低分子医薬品なら経口剤にできるのです。毎日、自宅で食後に薬が飲めるほうが、患者さんのQOLが向上することはいうまでもありません。
2018年の設立以来、資金面だけでなくビジネス面でもMUCAPのサポートをいただいているおかげで、当初の計画よりもスピード感をもって進展しています。私たちは製薬会社からバイオベンチャーとして世に出る「ファーストペンギン」だと思っています。私が米国のベンチャーのエコシステムを目の当たりにして情熱をかき立てられたように、後に続く研究者が、私たちを見て、自分たちも日本発の創薬エコシステムを築いていきたい、と思ってくれるよう、日本のライフサイエンスベンチャーを変えていきたい。それが、まだ何もないときにいち早く手を挙げてくれ、その後も変わらぬ支援を続けてくれているMUCAPへの恩返しにもなると考えています。

2019年12月 取材

会社名

株式会社リボルナバイオサイエンス
https://rebornabiosciences.com/

主な事業内容

遺伝性希少疾患に対するRNA機能の正常化による根本治療効果を示す医薬品の創薬プログラムの研究開発

沿革

2018年 2月 株式会社リボルナバイオサイエンス設立
4月 事業開始
5月 第三者割当増資により武田薬品工業株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社より総額2億5,600万円の資金調達を実施(シリーズA)