MUFG
三菱UFJキャピタル株式会社
MENUCLOSE
文字サイズ
MUCAP 50th Anniversary.
  1. HOME
  2. “Real Voices”
  3. 身内のがん患者にも安心して勧められるがん治療薬を目指して

“Real Voices”“リアル ボイス”

Delta-Fly Pharma株式会社
代表取締役社長 工学博士 江島 清 氏

身内のがん患者にも安心して勧められるがん治療薬を目指して

Delta-Fly Pharma株式会社は、得意のモジュール創薬技術を駆使し、新薬開発の最大効率化を追求しているバイオベンチャー企業です。創立からわずか5年余りで3つの開発パイプラインを臨床試験の本場の米国で第一相から第三相の臨床試験段階に乗せると言う離れ業的な成果を上げています。
創業に至る経緯やバイオベンチャーとしての特質、三菱UFJキャピタルとの関係について、創業者であり、代表取締役社長を務める江島 清氏にお聞きしました。

創業に至る経緯

~ 30数年のキャリアを活かして起業

私は当社本店を設置する徳島県で生まれ育ちました。高校時代に化学に興味を持ち、名古屋工業大学、東京工業大学修士課程と研究一筋の学生生活を送りました。
就職時は大変な就職難で、大学院での担当教授から、地元に就職先があるのなら、そこからアプローチしてはどうかというアドバイスを受けました。そこで、徳島県随一の製薬企業である大塚グループに就職し、その事業会社の一つである大鵬薬品工業に配属になりました。入社後すぐに早稲田大学理工学部の土田英俊教授研究室に留学し、12年ほど研究者として医薬品、特に、機能性高分子から成る新薬の開発に関する研究に取り組みました。その後、社に戻ってからはさまざまなポストを歴任することになります。
医薬品のシーズ探索を担当する部門にいた頃に、米国バイオベンチャーの中心だったボストンやサンフランシスコでベンチャーのマネジメントのあり方などを目の当たりにし、自分でもやってみたいという気持ちが湧き上がってきました。大手製薬企業の研究開発組織は非常に規模が大きくなっており、一個人の意志はどうしてもOne of Themになってしまう。その点、自分の会社なら、自分の意志で最初から最後までマネジメントし易い。これはとても魅力に感じました。
2010年、61歳で研究開発担当の取締役を株主総会決議に従って退任した後、この分野でもうひと仕事したいと満を持して起業しました。これまで30数年間培ってきたがん治療薬に関する知識やノウハウを結集し、身内のがん患者にも安心して勧められるがん治療薬を開発していきたいと考えています。

三菱UFJキャピタルとの出会い

~ 人との出会いに恵まれた

設立から5年余り。ラッキーだったと思うのは、人との出会いに恵まれたことでしょうか。国内のさまざまなバイオベンチャーに関わってきたキャリアを持つ人にスタッフとして加わってもらい、彼に資金調達を一任した結果、設立から1年半ほどでベンチャーキャピタル5社からの投資をいただくことができました。三菱UFJキャピタルとはそのうちの1社としておつきあいがスタートしました。
三菱UFJキャピタルの当社担当者は、以前、製薬会社でがんを専門にしていた経歴があるとのことで、共通の土壌があるという信頼感があります。また、そのような人材を配置できるのは、三菱UFJキャピタルの組織力に確かな厚みがあることの証明であると考えています。
4半期に一度、事業の進捗を報告する会合を設けています。そこでは、事業に関するあらゆるデータを洗いざらい提示し、その善し悪しもお伝えしていますが、共通の土壌があるということで話が早いうえ、上層部への報告も的確かつフェアであると思います。
このように人との出会いに恵まれたことが、現在に至っている大きな要因だと考えています。

三菱UFJキャピタルとのリレーションシップ

~ 「モジュール創薬」で開発効率の最大化を追求

当社では「モジュール創薬」というコンセプトで製品を開発しています。従来の創薬プロセスではターゲットとなる酵素や受容体を決め、そこに作用する化合物をデザインし最適化していきます。しかし、この方法論では非常に長い年月と多大な人的リソース、さらに資金が必要になります。
「モジュール創薬」では、臨床的には承認されていながら効果と副作用のバランスがとれていないものをもう一度見直し、効果と安全性をより高い次元でバランスを取らせたものに改善していきます。たとえば抗がん剤の活性物質に高分子技術や、デリバリー(選択的にがん細胞に作用させる)技術などを組み合わせることで、より良いモディファイをしていくのです。
現代のクルマやスマートフォンでは全体を構成する要素をモジュールとして捉え、それらをアセンブルする開発手法で高い機能や品質を短期間で実現できるようになっています。この発想を医薬品に応用すると、開発期間が劇的に効率化・短縮化できます。アセンブルの仕方を変えることで、バラエティに富んだ薬剤をスピーディに開発することが可能になります。当社が設立から5年余りで3つの開発パイプラインを臨床試験の本場で第一相から第三相試験の段階に乗せることができているのはこのコンセプトがあってこそです。
このような開発コンセプトにも三菱UFJキャピタルの当社担当者は深い理解を示してくれています。
先般、三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)が主催するビジネスコンテスト「第3回BTMUビジネスサポート・プログラム『Rise Up Festa』」で優秀賞をいただきました。これも三菱UFJキャピタルの当社担当者の推薦で参加したものでしたが、「モジュール創薬」に代表される当社ならではのノウハウや知見をご評価いただいたものと考えています。

これからの起業家に向けて

~ ビジネス=社会貢献という発想

アメリカのバイオベンチャーの人たちと付き合って痛感したことですが、彼らはビジネスを社会貢献として捉えており、自分の専門性をいかに活用してビジネスに繋げ、社会に貢献していくかという思考回路が非常に訓練されています。研究者は研究だけしていればいいという日本の風潮とは大きく異なります。これからの若い方たちにも、ぜひそのような発想で研究開発に取り組んで欲しいと思います。
ビジネスとは単なるお金儲けではなく、社会貢献なのです。当社でいえば、効き目が十分で副作用の少ないがん治療薬をお届けすることで患者さんに喜んでいただき、その対価として事業が成り立っていくということですね。
そのような発想で、サイエンスとビジネスをつなぐことを意識していれば、それほど大きな資金がなくとも、結構すごいことができるのではないかと思います。

2016年7月 取材

会社名

Delta-Fly Pharma株式会社
http://delta-flypharma.co.jp/

主な事業内容

モジュール創薬技術基盤に基づいた新規抗がん剤の研究開発。

沿革

2010年 12月 Delta-Fly Pharma株式会社 設立
2012年 4月 東京事務所 開設
2014年 4月 北京事務所 開設
サンディエゴ事務所 開設準備中