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三菱UFJキャピタル株式会社
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“Real Voices”“リアル ボイス”

Hmcomm株式会社
代表取締役CEO 三本 幸司 氏

人の聴覚を代替する新しいビジネス分野を確立する

Hmcomm株式会社は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)の音声認識技術を用い、音声に特化したAIの研究開発と、そのプロダクトやサービスの提供を行っているベンチャー企業です。コールセンターに向けたソリューションを主軸にビジネスを推進し、確かな成果を上げています。創業に至る経緯や三菱UFJキャピタル(以後、MUCAP)とのリレーションについて、創業者であり、代表取締役CEOの三本 幸司氏にお聞きしました。

創業に至る経緯

~ 技術で世界と勝負できるエンジニアが育つ環境を作りたい

私は長きに亘り、大手のソフトウェア開発会社に勤め、ソフトウェア開発を皮切りに、プロジェクトマネージャーから組織のマネジメントまでを手がけてきました。
日本の場合、ソフトウェア開発は企業のお客様の発注を受けて開発する「受託開発」で進められてきました。ビジネスモデルとしては土木・建設業におけるゼネコンスタイルといえるでしょう。
一方で、現代の主流は米国シリコンバレースタイル。自分たちが創りたいものを、自分たちで資金を集め、技術開発をして製品に仕立て上げ、自分たちの責任においてマーケットに問います。AppleやMicrosoft、Google、FacebookといったグローバルIT企業はそのようにスタートして成長し、巨大になりました。市場から、世界から、認められたということです。
そのようなシビアな環境と、受託というある意味で守られている環境と、どちらが技術力の高いエンジニアが育つか。答えは明白です。
私は米国のグローバルIT企業のように、自分たちでリスクを取り、技術と成果で勝負するということがしたかったのです。グローバルIT企業のエンジニアに負けないようなスーパープログラマーやエンジニアが育つ環境を作りたかったのです。そういう人材がこれからの日本には絶対に必要になると確信していました。少々かっこよすぎるかもしれませんが、これが独立・起業に至った動機の、大きな部分を占めているのは確かです。

MUCAPとの出会い

~ コールセンターのSpeech to Textの事業化を構想

前職を辞してから2年ほどは、それまでの人脈を活用し、お客様のソフトウェア開発のお手伝い的なことをひとりでやっていました。あるとき、前職の仲間とフィリピンに行く機会がありました。フィリピンは英語がネイティブということで、北米企業のコールセンターのアウトソース先として活況を呈していました。中でも興味を持ったのは、たくさんのオペレーターがお客さまからの電話を受けて、その内容をテキストに書き起こしていたということ(Speech to Text)です。非構造化データである音声をテキストという構造化データにすると、検索が容易になったり、研修題材に使ったり、顧客満足向上の素材に利用できるなど、さまざまな活用が可能になります。この流れはいずれ日本にも来るだろう、これを日本でやってみたいと考えました。最初は、人的コストが安いフィリピンで日本語ができる人を集めようかと考えていたのですが、音声認識の技術を使って自動化することを思いつきました。
帰国して音声認識についていろいろ調べていく中で、産総研の技術移転ベンチャー制度を知り応募したところ、選定、称号付与を受け、産総研の優れた音声認識技術が使えることになりました。そして2014年、産総研発ベンチャーとして改めてスタートを切るタイミングで、産総研からMUCAPを紹介されたのです。
初めてMUCAPの担当者の縫部さんとお会いしたときは、まだこちらも準備が十分ではなく、きちんとした事業計画もなく、とはいえ資金は必要ということで、私としては熱く語っていたつもりでしたが、どこか空回りしていたのではないかと思います。

MUCAPとのリレーション

~ 取引先、出資企業の紹介など、多方面にわたるサポート

それでも、縫部さんは定期的に連絡をしてくれるなど、誠実な対応をしていただいていました。他のベンチャーキャピタルとはそこがまったく違っていましたね。他社の場合、最初は会っていただけますが、そこでの感触が良くないと、次は会っていただけないどころか、メールをしても無反応ということもありました。また、縫部さんは、出資関係が無いにもかかわらず、当社とシナジーを発揮できる可能性のある企業を提案してくれるなど、熱意を持って接してくれました。1年半ほどそのようなお付き合いが続いた後で、ある大手企業との契約がまとまるかもしれないというときに、そのことを報告したところ、詳細な事業計画書を作りましょうということになり、その作成もお手伝いいただきました。その流れで、シリーズAの資金調達を行うことができたのです。また、調達後には、大手通販会社の他、鉄道会社、機器メーカー、システム開発会社、コンサルティング会社、カード会社、旅行代理店など幅広い企業を紹介していただきました。それらが幾つかの成約に繋がり、事業拡大の力強い後押しとなりました。今、当社に出資していただいている企業は、大半がMUCAPから紹介していただいた企業です。お客様としてご紹介いただいた企業が、後に「出資も」ということになるなど、ほとんどがMUCAP経由で知己を得たところばかりです。MUCAPは三菱UFJグループの一員として、非常に幅広い企業とのお付き合いがあり、それがVCとしての高いポテンシャルのバックボーンになっているのだと思います。ちなみに縫部さんには、当社の社外取締役に就任していただいています。

今後の展望

~ 人の聴覚を代替するビジネスのグローバル展開を目指して

これまでは産総研の音声認識技術をベースに、Speech to Textの分野を極めようと研究開発に取り組み、コールセンター向けソリューションを中心に実用化を進めてきました。先般、これからの本格的な拡販のフェイズに向けて、シリーズBの資金調達を行い、MUCAPにはリードとして出資していただきました。この資金を元手に、コールセンターのソリューションで一定のシェアを獲得することが当面の目標です。
また、音声認識、音声合成、自然言語処理を組み合わせ、無人応対が可能で、自然な応答が可能なAIオペレーターも開発しました。「Terry(テリー)」と呼ぶこのソリューションは大手通販会社、大手家電量販店に採用され、コール急増時のオペレーター人員不足などに効果を発揮しています。さらに、音の特徴量から異音を検出する事業にもチャレンジしています。例えば、畜産分野では豚の鳴き声による疾病の検知、機械・設備分野では異音による故障の検知など、さまざまな分野での応用を行っています。プロダクトを磨き、将来的にはSaaSモデルとしてグローバル展開したいと考えています。
視覚関連のベンチャービジネスはたくさんありますが、聴覚を代替するベンチャーはグローバルでもまだ少なく、ブルーオーシャンといえる領域です。次なる飛躍に向け、しっかり着実に取り組んでいこうと考えています。

2019年11月 取材

会社名

Hmcomm株式会社
https://hmcom.co.jp/

主な事業内容

音声に特化した人工知能・深層学習技術の研究/開発、プロダクト/サービスの提供。

沿革

2012年 7月 H&Mコミュニケーション株式会社 設立(横浜)
2014年 6月 Hmcomm株式会社に社名変更
8月 東京支社設立
国立研究開発法人産業技術総合研究所より産総研技術移転ベンチャー認定
2016年 12月 第三者割当増資により資金調達を実施(シリーズA)
2017年 3月 本社移転(東京都港区虎ノ門)
2018年 6月 第三者割当増資により資金調達を実施(シリーズB)
2019年 12月 第三者割当増資により資金調達を実施(シリーズC)