顧客の声を会社とビジネスの成長エンジンに変える
株式会社ジーネクストは、従来はアナログな手段で収集・処理されていたVoC(Voice of The Customer:「お客さま相談室」など企業と顧客を繋ぐ窓口に寄せられる指摘・要望・お褒め等の顧客の声)をデジタル化・可視化することで、現場から経営へ全社で統一された危機管理・品質管理をタイムリーに実施し、会社とビジネスの成長に寄与する顧客対応DXプラットフォーム「Discoveriez」を開発・販売する会社。VoC向けDXプラットフォームというニッチな領域ながら、国内トップの実績を積み重ねてきています。そのジーネクストを率いる代表取締役の横治祐介氏に、創業に至る経緯や三菱UFJキャピタル(以下、MUCAP)との関係性についてお聞きしました。
創業に至る経緯
~ お客さま対応窓口の重要性への気付き
幼い頃からパソコンが身近にある環境で育ったことから、パソコンでものづくりをすることが好きでした。大学卒業後、ゲーム会社に就職しましたが、それほどゲームが好きというわけではなかったことに気づいてしまいました。ある時、BtoBの会計システムに携わる機会があったときに、今でいうUI/UXが何も考えられていなかったことを目の当たりにし、ここにビジネスチャンスがあるのかもしれないと考え、独立・起業したのが当社のスタートラインです。
創業から2年目の時に、大手事務機器メーカーのお客さま対応窓口システムのリプレイスを手がけることになり、それが大きな転機になりました。お客さま先に常駐し、電話を受けている人の横で仕事にあたっていたのですが、属人化された業務内容で非常に大変そうでした。それと同時に、この部門には非常に良質な情報が集まってくるということに気づきました。たとえば、製品に対するクレームがあるということは、そのまま製品改善の大きなヒントになります。また、営業に来てほしいという声が営業を介さずに直接届くこともあり、そうした声を営業部門に渡すときの工夫次第で売上向上にもつながります。お客さま対応窓口とは、そうしたビジネス成長に直結する情報が集約されている部門だったのです。このことに気づいて、この部門のシステム開発を主力事業にしていこうと決断し、現在に至っています。
三菱UFJキャピタルとの出会い
~ 企業体質改善のきっかけに
MUCAPと初めてコンタクトしたのは2019年の春。実はそのときには投資には至りませんでした。準備こそ進めていたとはいえ、クラウドシフトを本格化させる前のタイミングで、事業計画にも甘い部分があったことは否めなかったと思います。ですが、真摯にその部分を指摘していただいたことで、SaaS化、クラウド化に本腰を入れるきっかけにもなりました。それ以前から個別に提供していた顧客対応業務向けのナレッジや音声認識などのサービスを、顧客対応DXプラットフォームとして統合しようという展開で、これが現在の「Discoveriez」につながっています。
当時の経営陣は私を含めてものづくりが好きで、開発となるとついついアクセルペダルが踏みっぱなしになっていたのですが、ちょうどその頃、いい意味でブレーキ役を担ってくれる人材がCFOとしてジョインしてくれました。ペダルを踏むにせよビジネスである以上は制限を設けるべきと、コストコントロールを精緻化し、ファイナンス戦略を見てくれるようになってから、会社が筋肉質に、ソリッドになっていきました。また、制限の中でペダルの踏み方をコントロールしていくことは、より深く顧客ニーズを考えることにもつながりました。たとえば、Aという機能をリクエストされたときに、実はBという機能を追加することが本質的な解決につながるのではないかなど、以前よりも突き詰めて考えるようになったことで、開発リソースをより有効に活用できるようになったのです。そうした会社の変化を経て、2020年にあらためてMUCAPと面談する機会を得ました。そして「Discoveriez」のポテンシャルを高く評価していただき、正式なお付き合いが始まることになりました。
三菱UFJキャピタルとのリレーション
~ 銀行系とは思えない攻めの姿勢に感銘
いろいろなVCともお話しさせていただきましたが、MUCAPがもっとも他社と異なるのは、銀行系VCとは思えない攻めの姿勢にあると思っています。具体的には、VCラウンドのときに積極的にリードを取っていただきました。後になってMUCAPの担当者の佐藤さんは「VoC向けDXプラットフォームとしては国内トップということで、「Discoveriez」がプロダクトとして優れていることは一目瞭然だった。CFOの方が就任してから企業体質も改善されていた。攻めたというよりは真っ当にジャッジした結果に過ぎない」と話してくださいましたが、私たちの話をきちんと聞き、プロダクトについても深く理解をしてくれたうえで、コミットを示してくれました。
MUCAPがリードに手を上げてくれたことが呼び水となって、他のVCも参加して、その資金調達を成功させることができました。これには本当に感謝しています。短い期間でもこれだけの信頼関係を構築できたのは、MUCAPだからこそと考えています。
今後の展望
~ 企業のあらゆるステークホルダーの“声”を成長エンジンに
上場前と後とを比較すると、やること自体は変わっていません。ですが上場したことによって社会的な信用度が増し、以前よりも新しい展開への打ち手の選択肢が増えていることは実感しています。もっと成長できるという感触が得られているのは、経営者としてハッピーですね。私自身は強烈なカリスマで引っ張っていくというタイプでなく、いろいろな人から学ばせていただくことが多いことから「以人為鑑」という中国の故事を意識して経営にあたっています。相手の声をよく聞いて学ぶというのは、顧客対応DXプラットフォームである「Discoveriez」にも重なるものがあると思っています。
今後は顧客だけなく、それ以外のすべてのステークホルダー、たとえば従業員、株主など、企業の多様なステークホルダーに対応し、情報共有とマネジメントに役立つプラットフォームとして「Discoveriez」をより進化させていきたいと考えています。
2021年8月 取材
会社名
株式会社ジーネクスト
https://www.gnext.co.jp/
主な事業内容
- 顧客対応DXプラットフォーム「Discoveriez」の開発・販売
- 顧客接点データを活用したBI/AIの開発
- ミャンマーにてIT関連のオフショア開発
沿革
2001年 | 7月 | 東京都新宿区神楽坂に有限会社ジーネクストを創業 |
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2003年 | 4月 | お客さま相談室専用サービス「CRMotion」を提供開始 |
2005年 | 4月 | 有限会社ジーネクストから株式会社ジーネクストに商号変更 |
2012年 | 4月 | 本店所在地を東京都千代田区飯田橋に移転 |
2014年 | 5月 | ソフトウェアの開発を目的にミャンマー連邦共和国ヤンゴン市に連結子会社 G-NEXT Company Limited(株式会社ジーネクスト ミャンマー)を設立 |
2019年 | 11月 | 顧客対応DXプラットフォーム「Discoveriez」リリース |
2021年 | 3月 | 東証マザーズ上場(証券コード:4179) |