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三菱UFJキャピタル株式会社
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MUCAP 50th Anniversary.
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“Real Voices”“リアル ボイス”

株式会社TORICO
代表取締役 安藤 拓郎 氏

漫画やアニメ、イベントで「世界を虜に」

株式会社TORICOは、「日本」だけじゃなく「世界」をただ「好き」じゃなく「虜」にして"世界に「楽しみ」を増やす"ことを目指している会社です。オリジナルスニーカーの製造販売を皮切りに、それまでありそうでなかった漫画全巻のセット販売を開始、マンガアプリのリリースや、漫画・アニメをモチーフとしたイベントスペースの運営など、多角的に事業を展開し、2022年3月に東証マザーズ上場を果たしました。上場を機に、満を持して海外展開に挑むTORICOを率いる代表取締役の安藤拓郎氏に、これまでの歩みや三菱UFJキャピタル(以下、MUCAP)との関係性、今後の展望についてお聞きしました。

TORICO設立に至る経緯

~ オリジナルスニーカーがいつの間にか漫画に

小さい頃は野球少年でした。その流れでスニーカーが好きになり、自分が好きなブランド以外は履きたくないと親を困らせたりしていましたね。大学の卒業旅行で世界一周をしたときに、世界にはいろいろな人がいるなと大きなインパクトを受けました。いつかは世界を相手にビジネスがしたいという想いは、そのときに芽生えたものです。
社会人になってからもスニーカー好きは続いていたのですが、それが高じて、中国の工場とやりとりして自分の作りたいスニーカーを作ってみました。最低ロットが100足からだったのでその数を作り、自分で履く分以外をネットオークションで販売してみたら、これが売れたのです。これはビジネスになるだろうと「TORICO」のブランド名で起業しました。ところがいざ会社として始めてみたら、まったく売れない。最初は物珍しさからマニアの人が買ってくれたようですが、すぐに尻すぼみになりました。でもこのままで終わらない、あきらめるなら思いつく限りのアイデアを試してからと思っていました。TORICOはスニーカーを作る会社として立ち上げたので、スニーカーを届けるのは勿論ですが、買ったスニーカーを次の日履ける「ワクワク感」を届けたいと考えて事業を行っていました。この「ワクワク感」を他に届けられないかと考えている中で漫画を全巻販売するというアイデアが出て、1週間でECサイト「漫画全巻ドットコム」を立ち上げました。そんなに売れると思っていなかったのですが、リリース初日に注文が入りました。びっくりしたし、とても嬉しかったことを覚えています。それからは注文が入った作品を中古書店に探しに行く日々が始まり、いつの間にかマンガの会社になっていきました。

三菱UFJキャピタルとの出会い

~ 自分たちの強みの源泉に気づかせていただいた

MUCAPの担当者の橋本さんと初めてお会いしたのは、創業から10年ほど経った2015年頃のことでした。全巻販売は軌道に乗っていたものの、電子書籍やコミックアプリが出始めていた時期で、そこにどう対処していくかが我々の課題でした。そのための資金調達を検討していた流れでお会いしました。
それまでの経験から、メガバンク系のVCはお堅いという先入観があったのですが、実際にお会いしてみると、橋本さんご自身も漫画やアニメに造詣の深い方で、ざっくばらんな雰囲気で話を聞いてくれました。
当時は自分たちの売上の源泉、強みというのは、正確に把握できていませんでした。キャンペーンやポイント施策など、売り方の部分で自分たちなりに工夫はしていて、それで伸びてきたと認識していたのですが、橋本さんはそこをさらに深掘りしてくるのです。他のVCなら「売上が伸びていていいですね」くらいで終わる会話が、彼の場合は「なぜそうなっているのか」と、言い方は良くないですが、本当にしつこいくらい追求してきました。そうして一緒に考えている中で、返本率が低いという事実を指摘されました。確かに、世の中では返本率の平均が40%のところ、我々は1%と、まさに桁が違っていました。この裏付けが、出版社や取次会社と優位に取引できたり、安定した仕入れができたりとさまざまな強みの源泉になっていました。我々にとって強固な武器に気づかせていただいたと思っています。

三菱UFJキャピタルとのリレーション

~ 信頼して見守ってくれているという安心感

MUCAPのご尽力もあり、2016年に資金調達を実施することができました。ところがその1週間後に最大の仕入先で大株主だった取次会社が倒産してしまうという事件が起きたのです。これから新たな事業に向けて走り出せると思った矢先に、なにがなんだかわからないうちに事態の収拾と、新たな仕入先探しに奔走することになってしまいました。他のVCからは「どうなっているんだ?!」と責められた事もありましたし、それは当然だとも思っていましたが、MUCAPのスタンスは一貫して、信頼して見守るというものでした。2週間に1度程度は必ず連絡をいただき、その都度、報告と相談をしていました。正直、特にお話する内容がないようなときもありました(笑)が、「なにかあれば対応するから、困ったら相談してください」というスタンスは、事態が収拾した後もまったく変わらなかったですね。
担当者が交代したタイミングだけ連絡が密になるものの、だんだん薄れていくというのはよくあるパターンですが、MUCAPはそんなことはなく、定期的にコンタクトを取り続けてくれました。上場準備の期間中も、第三者としての視点から有用な意見を聞かせていただきました。今後も、変わらないスタンスでサポートをしていただけたらありがたいなと。特に協業できそうな会社を紹介していただくなど、これまで同様、多方面に顔が広いメガバンク系ならではのサポートに期待したいところです。

今後の展望

~ 社名に込めた世界への想い

あるとき、出版社からの依頼で、オフィスの一角で漫画家の先生のサイン会を開いたことがあります。そのときに来てくれたお客さんの熱に触れて、感動したことがあります。ネットビジネスをしているとお客さんと直に触れ合うことはなかなかありませんが、そのときに、漫画を買っていただいたうえに、作家さんに会えたと涙を流して感謝までしてもらえたーーそんな体験が、今後伸ばそうとしているイベント事業に取り組むきっかけになっています。この秋にはイベントスペースを台湾にも出店し、海外展開をスタートさせます。「世界を虜に」したいということで、外国人も読めるようにローマ字読みの社名でスタートしてからずいぶんと時間がかかってしまいましたが、いよいよ機は熟したかなと。

若手経営者へのメッセージ

スニーカーでうまくいかなかったときに、コミックをまとめて届けたら、自分のようにまとめ読みしたい人が100人くらいは喜んでくれるかなというところが、すべての始まりでした。今でもそんなに素晴らしいアイデアとは思っていないし、よくここまで来られたというのが正直な気持ちです。でも、逆に考えれば、それでもここまでは来られるということ。要はやるかやらないかだと思うのです。ですから、もっと気軽に思いついたアイデアを試してみればいいと思うし、続けていけばそのサービスにいろいろな付加価値がつき、いろいろな人たちが集まり、さらにビジネスが加速していくという流れになっていくのではないかと思っています。

2022年8月 取材

会社名

株式会社TORICO
https://www.torico-corp.com/

主な事業内容

  • Eコマース事業
  • メディアデジタル事業
  • イベント事業
  • 漫画出版事業
  • 書店運営事業

沿革

2005年 7月 オリジナルスニーカーの製造販売事業を目的に東京都中野区に設立
2006年 8月 コミック全巻セットECサービス「漫画全巻ドットコム」を開始
2014年 5月 本社倉庫を東京都千代田区に移転(現本社オフィス/倉庫)
2015年 4月 女性向けコミックECサービス「ホーリンラブブックス」を事業譲受により開始
2016年 5月 男性向けコミックECサービス「まんが王」を事業譲受により開始
7月 イベントサービス「マンガ展」開始
デジタルコミック配信サービス「スキマ」を開始
2017年 10月 海外向けデジタルコミック配信サービス「MANGA.CLUB」を開始
2018年 3月 コミック紹介の情報サービス「マンガのとりこ」を開始
イベントスペース「マンガ展池袋」を東京都豊島区に開店
2019年 9月 イベントスペース「マンガ展大阪」を大阪府大阪市中央区に開店
2020年 7月 リアル書店「リブリオShop」を福岡県行橋市に開店
10月 第2倉庫(舎人DC)を東京都足立区に開設
2021年 4月 イベント(物販)スペース「マンガ展渋谷」を東京都渋谷区に開店
9月 「漫画全巻ドットコム」ECアプリリリース
第3倉庫(川口DC)を埼玉県川口市に開設
2022年 3月 イベントスペース「マンガ展名古屋」を愛知県名古屋市東区に開店
東証マザーズ上場(証券コード:7138)
8月 台湾支社を台北市内に設立